いつでも一番星
「雫は健気だね~。見てるだけでいいなんて」
「健気、なのかな……」
わたしにとっては見てるだけで満足だから、全然そんなふうには思えない。
いつの間にか少し先を歩いていた茉理ちゃんが振り返る。
さらりと揺れたショートカットの髪の隙間から現れた表情は、ちょっとだけ真剣なものだった。
「健気すぎるよ、雫は! 本当にいいの? 見てるだけで。そんな奥手のままだといつか肉食女子に先越されて、ナツのこと捕られちゃうよ??」
「にっ、肉食女子……」
説得力のある茉理ちゃんの言葉に気圧されて、少しだけたじろいだ。
確かに、そういう子はたくさんいると思う。
わたしと違って、あからさまにナツくんに話しかけたりしている子たちもよく見かけるし。
それに、何度か告白の噂も耳にしたことがある。ナツくんはそれを全部、断っているみたいだけど。
だからナツくんは今、フリーの状態ってこと。
でもそれは茉理ちゃんが言うように、いつ変化してもおかしくないってことなんだ。
ナツくんに好意を抱いている女子がいる限りは、ずっとある可能性。
だけど、わたしは……。
「……そのときは、しょうがないよ。ナツくんが誰かと付き合ったりしたら、ショックかもしれない。だけど、そんなことで憧れの気持ちはなくなったりしない。だからわたしは別に、健気なままでいいの」
茉理ちゃんの真剣な表情に向かって、芯が入った声でそう返した。
きっと、この気持ちは変わらない。
わたしには無駄に、そう思えるんだ。