いつでも一番星
祈り
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10月最初の土曜日。
今日は月に一度の、家庭部の調理実習の日だった。
食事と片付けを済ませて調理室から昇降口に向かう最中に、サトちゃんと作ったお菓子の話で盛り上がる。
「今日のお菓子もおいしかったね!」
「うん、おいしかった! あれ、ここ最近の中では一番好きかも」
作ったのは、オレンジパウンドケーキとカボチャプリン。
どっちも素材の甘さを生かして作ったからカロリーが低くて、ほのかな甘さがすごく好みの味だった。
「サトちゃんはどっちが好き?」
「うーん、どっちも好きだけど、選ぶとしたらカボチャプリンかなー。雫ちゃんは?」
「わたしは選ぶとしたら、オレンジパウンドケーキかな。わたし、オレンジが好きだから」
「あー、なるほど。好きだから余ったやつ、あんなにタッパーに詰め込んでたわけね」
「ふふっ、そうだよー」
肩からさげているトートバッグの中には、サトちゃんが言うようにオレンジパウンドケーキを詰め込んだタッパーが入っている。
詰め込んだって言っても、みんなで食べて余ったぶんだから、そんなにたくさんはないけどね。
でも、それでも十分だし、自然と心は弾む。
好きなものを作って食べるのは、何だか幸せなことだから。
今度は家でも作ってみようっと。
パウンドケーキの甘酸っぱい味を思い出しながらそう思った。
そして、上機嫌で調理室の近くにある被服室の前を通ったとき。
わたしはふと、重大なことを思い出した。
「……あっ、しまった!! 被服室に材料置いたままだ!」
「材料って……展示のやつ?」
「うん、そう!」
首を傾げているサトちゃんに頷く。
パウンドケーキのことを考えていた頭の中が、一気に穏やかではなくなった。