いつでも一番星


「えーっと、わたしのやつは……」


被服室に入って真っ直ぐ向かったのは、部屋の後方下部に備えつけられている戸棚。

そこの半分は授業で使用する道具類をしまうのに使われていて、残りは家庭部の道具類や材料を置くスペースになっている。

わたしはしゃがんで家庭部側の戸棚を開けて、そこから自分の荷物を取り出した。

……うん、これであってるよね。

黒地に、カラフルな星模様が散りばめられている布バッグ。
手にしたそれが自分のものであることを確認してから、戸棚を閉めて立ち上がる。

そこで、ふと。
自分の身体が西日に照らされて、足元に影ができていることに気づいた。


「……あっ、カーテン閉め忘れてる」


淡いオレンジ色の光の道筋を目で追うと、窓際のカーテンが端で束ねられたままだった。

遮るものが何もない窓ガラスから、夕焼けの空が見える。

なるほどね。
どうりで電気も点けてないのに、部屋が明るいわけだ。

きっと金曜日、部活で最後まで残っていた誰かがカーテンだけ閉め忘れちゃったんだろうなぁ。

確かわたしが帰ったあとも、数人は残って活動していたはずだから。


ついでに閉めて帰ろうと、荷物を窓際の机に置いてカーテンに手を伸ばす。

だけど、カーテンを半分だけ閉め終えたとき。
人気がなかったはずのグラウンドでひとりの人影が動いたのが見えて、思わずそっちの方角を見たまま固まった。

……運動部の人、まだ誰か残ってたんだ。

調理室で午後から実習をしていたとき、グラウンドに陸上部と野球部がいるのは見えていた。

でもわたしたちが片付けを済ませて解散する頃には、グラウンドからも人が減っていったはず。

だから、とっくに運動部の人たちも帰ったと思い込んでいた。


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