いつでも一番星
……そう、思い込んでいただけに。
誰もいなかったはずのグラウンドに突如現れた人影に、大袈裟に心臓が跳ねる。
い、いきなり出てくるんだもん。
ちょっとびっくりしちゃったよ……。
人影は、グラウンドの脇にある部室棟の方からこちらに向かって歩いてくる。
たぶん、部室から出てきたから、急に現れたように見えたんだ。
まだ閉めていない方のカーテンの束に向かいながら、ちらりと人影に目を向ける。
短髪だし制服がスラックスだから、きっと男子だろう。
ここからでは遠すぎて、さすがに持っているエナメルバッグが何部指定のものなのかはわからなかった。
陸上部か野球部の人には、間違いないだろうけど。
「……ナツくん、だったらいいのに」
もう片方のカーテンを閉めながら、つい、願望が口から漏れた。
調理室にいるとき、グラウンドにいたはずのナツくんの姿をあまり確認できなかったっていうのもあるけど。
……何だか、やけにナツくんに会いたいと思った。
いつもナツくんを見つめているこの場所にいたら、無性にナツくんの存在を感じたくなって。
あの近づいてくる人がナツくんだったら、きっと嬉しい気持ちになるような気がしたんだ。
だけど、そんな都合のいいことなんて、あるわけない。
そう思っていたわたしは、もう一度窓の外を見た瞬間……息が止まるかと思った。
「……う、そ。ほんとに、ナツくんだ……!」
さっきよりも校舎に近づいてきている人物。
高身長な身体を真っ直ぐ伸ばして歩いているその人は、本当にナツくんだったんだ。