いつでも一番星


日差しが眩しくてまだはっきりとは見えにくいけど、絶対にそうだ。

願望が見せた幻でも、単なる人違いなわけでもない。

だってわたしが、ナツくんを見違えるわけないもん。

ずっと憧れて見てきたから、それだけは自信がある。


カーテンを中途半端に引っ張った状態のまま凝視していると、やがて顔もはっきりと確認することができた。

よく見慣れた、でも近くで見ると緊張しちゃう、ナツくんの顔。

やっぱり、ナツくんだ……。

じわじわと温かいものが身体の中で動き出す。

土曜日の午後。
普段ならわたしはここにいないし、そもそも平日以外にナツくんと会う機会なんてない。

だから今この瞬間にナツくんの姿を見れたのは本当に貴重で、同じ場所から見ていても、少し違う気分だった。

想像していたよりも、ずっとずっと嬉しい。

会えたというよりも見かけたっていう方が正しいけれど、それでも十分だ。

……ああ、わたし。
月曜日が待てないほど、ナツくんに会いたかったんだなぁ。

こんな些細なことでも、一瞬で心の中がナツくんでいっぱいになっちゃうぐらい。


幸せな気分で自然と笑顔になった。

……と、その瞬間。
わたしの視線の先にいるナツくんが、こっちを見たような気がした。

えっ、まさか。
見つめすぎて気づかれた……!?

慌てて視線を下に逸らす。

有頂天だったのが一変して、動揺の渦に飲み込まれていった。

どうしよう!
こんな場所からこっそり見つめてるとか、さすがに怪しすぎるよね!

しかも、一部だけまだ閉めていないカーテンの隙間からなんて。
あっちから見たら、完全に不審者みたいじゃん……!


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