いつでも一番星
「やっぱり、平岡さんだったんだ!」
窓辺に寄ってきたナツくんが、ちょっと嬉しそうに声を弾ませる。
まるでクイズに正解したのを喜ぶような口ぶりだったから、身構えていたわたしとしては拍子抜けする反応だった。
でもその気軽いナツくんの言葉のおかげで、強張っていた顔から力が抜けていく。
「よくわかったね。ここにいるのがわたしだって」
「うん。俺、視力いいから。でも自信なかったから手を振ったんだ。振り返してくれたら、平岡さんだろうなーって思ったから」
「でもそれって、違った場合はかなり困るような気もするけど……」
「ははっ、確かにそうかもー」
ナツくんは間延びした声で能天気に笑う。
そしてそのまま、柔らかい笑みを向けて言った。
「でも、ちゃんと平岡さんだったからよかった」
安堵の意味を含んだ優しい声に、胸の奥がじわりと滲む。
校舎の外にいるナツくんはわたしよりも低い位置に立っているから、いつもより目線が下にあって。
近くに感じる声に、そばで重なる視線に、余計胸の音が高鳴った。
「……そういえば、平岡さんと土曜日に学校で会うの初めてだよね」
ナツくんは一瞬じっとわたしの顔を見たあと、不思議そうに首を傾げた。
どうやら一度、記憶を辿ったみたい。
「うん、初めてだよ。部活があるときは、たまに土曜日も学校に来てるけどね」
「そうなんだ。部活って何部?」
「家庭部だよ。普段はこの被服室で活動してて、月に1回は土日のどっちかで調理実習もしてるの」
「へえ、なるほど。家庭部ってそういう活動してたんだ」
ざっと部活の説明も加えると、ナツくんは興味を示した表情で聞いてくれていた。