いつでも一番星


「じゃあ、今日は調理実習だったんだね。……でも、あれ? 調理実習なのに、なんで被服室にいるの?」


わたしの背後の室内を覗きこむナツくん。

……やっぱり普通、そう思うよね。

さっきここからナツくんを見つめていたわたしとしては、その疑問に無駄に焦ってしまう。

盗み見するためにここにいた、なんて誤解はされたくなくて。慌てて本当の理由を説明する。


「き、昨日この部屋に忘れものしちゃって! それで、取りに来たの。そうしたらちょうど、窓の外に人影を見つけて……」

「あー、なるほど。それでこっち見てたんだ」


こくり、と。
小さく首を縦に動かす。

ナツくんの納得した声を聞いて一安心した。


「俺もね、部室から出て歩いてたら窓辺に人影を見つけたんだ」

「そうだったんだ……。そういえば、ナツくんも忘れものでもしたの? ひとりで部室から出てきたみたいだけど」

「いや、監督と話し込んでたから残ってただけだよ。今日の練習試合のことで、ちょっと聞きたいことがあったから」


練習試合。

ナツくんから出てきたその言葉で、以前バッティングセンターでナツくんと横峰くんが真剣に話していた光景を思い出した。

そういえば茉理ちゃんからも、ここ最近は練習試合をたくさんしてるっていう話を聞いた気がする。

それに、言われてみれば今日のグラウンド、いつもより人が多かったなぁ……。


「試合……どうだった?」


聞いていいものなのかちょっと悩んだけど、思いきって尋ねてみる。

ナツくんからの返答はすぐだった。


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