いつでも一番星
高嶺の花は、遠くから見ている限り、いつまでも高嶺の花であるように。
わたしがナツくんとの間に距離を置いている限り、憧れることには変わりはない。
適度に離れていることが、この気持ちを保つポイントなんだ。
断固として曲げないわたしの意思に、茉理ちゃんはやれやれといった感じでため息をこぼした。
「あーあ。雫は頑固だねぇ」
「ちょっと、そこは一途って言ってよ!」
「ハイハイ、一途ですねー」
茉理ちゃんはくすくすと笑いながら、全然理解していないそぶりでそう言った。
その姿に、小さく頬を膨らます。
それを見て、茉理ちゃんは余計に笑って楽しんでいた。
「まあ、でもさ。雫がナツを好きになるのは時間の問題だと思うよ?」
「どうして?」
「だってさー、今はあれじゃん。席が前後だし。いくら憧れだろうと、芸能人的な存在でも、近づけばなにが起こるかわからないじゃん」
2人の足は確実に校舎内を進み、気がつくと2階の教室のすぐそばまで来ていた。
2年2組。
ナツくんと同じ時間を過ごす場所のプレートが目に入り、身体が自然と緊張で固まった。
確かにわたしは今、ナツくんと席が前後だ。
真ん中の列の最後尾がわたしで、その前に座っているのがナツくん。
ちなみにナツくんの左隣は、茉理ちゃんだ。
今までナツくんがそんな近くにいることがなかったから、最近の授業中は変に緊張はしている。
でもそれは、人気者の彼がそばにいるからという独特なもの。
別に席が前後だからって、特別なことだって起きているわけでもない。