いつでも一番星


「勝ったよ。10対1で」

「わあ、すごい! 勝ててよかったね!」

「うん、ありがとう。……まあ、それでも課題は色々残るけどね」


一瞬、笑ったあと。
ナツくんの表情には影が宿った。

だけどそれを誤魔化すようにナツくんが笑うから、わたしの目に焼きついたのは不格好な苦笑い。

深く考えこんでいるような瞳に見覚えがあって、以前も同じようなことがあったなと思った。

……また、無理して笑ってるね。

試合結果はよかったけど、もしかして思い通りに投げられなかったのかな?

それともバッティングセンターで話していたみたいに、また試合では上手く打てなかったのかな?

課題が残るって言ってるし、何しろひとりで残って監督と話していたぐらいだ。
きっと、ナツくんの中では腑に落ちないところがあったんだろう。

でもそれを、ナツくんは笑って隠す。
だからわたしも、深く聞き出すことなんてできない。

何でも話してくれるほど心を開いてくれていないのは、嫌でもわかりきっているから。


「そっか……。次はもっと、満足できる試合になるといいね」


……でも、本当は話してほしい。

こういうところが上手くいかなかったんだって教えてくれたら、もっとたくさん言葉をかけられるから。

あまり野球に詳しくないわたしでは大したアドバイスもできないし、頼りないかもしれない。

だけど、精一杯の応援はできるよ。
ナツくんの気持ちに寄り添うことも、一緒に悩むこともできる。


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