梅酒で乾杯


 毎日は流れるように過ぎ、約束の金曜まではあっという間だった。
レジの前の棚を片付けていると、後ろから声をかけられる。


「実加さん、こんにちは」


泰明くんだ。右手にはいつものお弁当を持っている。あたしは慌ててレジに入る。


「毎度あり。今日はお弁当?」

「うん。疲れたもん。午前中講義びっしりで、路上教習もしてきたし」

「あはは、お疲れ」


話しながらレジを打っていると、スーツ姿の亘が入ってくる。目配せをしつつ、「いらっしゃいませ」と決まり文句を口にする。


「実加さん、彼氏じゃない?」


泰明くんは秘密の話でもするように、あたしに顔を近づけて尋ねた。


「そう。今日出かける約束してるんだ」

「へぇ。楽しんできてね」


泰明くんは笑って支払いを済ませると、すれ違いざま亘に軽く会釈をして店を出て行った。見知らぬ人に礼をされて、亘の方はきょとんとした顔をしている。


「……誰?」

「常連のお客さん。亘の後輩になるらしいよ。大学で見たことなかった?」

「何年生?」

「今二年って言ってたから、亘がいた時は一年生だね」

「じゃあわかんねーな。同じ学校って言ったって広いからな」

「だね。……もう終わりだから片づけてくるね」


交代のバイトの人が来たのを確認して、あたしは裏に下がった。

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