梅酒で乾杯
スーパーの近くまで行くと、見慣れた男の子の姿が見えた。
無意識に緊張していた体が自然にほぐれるのを感じる。
「おーい、泰明(やすあき)くん」
「あ、実加(みか)さん!」
あたしを見つけた泰明くんは、くしゃりと目を細めてブンブンと激しく手を振る。
その犬の尻尾のような動作は、私をふんわり癒してくれる。
あたしの隣にとことこやってくると、楽しそうに前髪を指さしてくる。
「髪型変えたんすか」
「ああー、見ないでよぅ。失敗だった。眉毛がー眉毛がー」
「そっかな。可愛いっすよ」
「またまた、上手いこと言うねー」
「ホントっす。眉毛出てるのがまたいいっす」
「それを気にしてるんだよー!」
おどけて肩を叩くと、彼は笑顔のままそれを受け止める。
泰明くんは、癒し系子犬男子だ。
尻尾を振ってキャンキャンすり寄ってくるみたいな感じ。
丸顔で童顔ってのも親しみやすいポイントだ。
彼氏ってわけでもないんだけど、抱きしめてギュッとしたくなっちゃう。
まあ、でも一応あたしも大人だし。そんな事はしないけどさ。