梅酒で乾杯
けれど突然、勢い良くドアが開いた。
男女入り混じった五人の集団が入ってくる。
皆スーツを着ているから会社の飲み会か何かかな、と思った辺りで、そのうちの数人が亘に気づいて近寄ってきた。
「あれー、近藤くん!」
突然名前を呼ばれた亘は、驚いて振り向いた。
「え? 安井、高里、それに……なんだ皆揃ってたんだ」
どうやら亘の会社の人たちらしい。さっきの誘いの人たちだったのかな。
あっという間にあたしたちは彼らに囲まれ、あたしは心臓が縮んでいくような気がした。
「デートってここでだったのかよ」
「えー? 近藤くんの彼女? 社外にちゃんとキープしてたんだ。ショックー」
きれいな女の人があたしを見る。
きっちりしたスーツをこなし、清潔感のあるお化粧をしている。
話している言葉は勢いがあって学生さんみたいにも感じるけど、見かけはちゃんと社会人だ。
それに比べて、あたしは中途半端な格好。
急に恥ずかしくなって、前髪を隠すように顔を伏せる。
「やめろよ、安井。彼女びびってんじゃん」
はははと飛び交う笑い声。
彼らの声は大きくて速くて、あたしにはついて行けない。
亘は彼らを制するように、人差し指を伸ばし、シーッと言った。