梅酒で乾杯
「お前らうるさいぞ、店の人に迷惑だ。紹介するよ。俺の彼女の栗原実加。実加、こいつら会社の同期なんだ」
亘は彼らに私の名前を告げ、私には彼らを集団として紹介した。個別に紹介されないってことはあまり深入りしなくていいのかな、と都合よく解釈する。
「こ、……こんばんは」
「こんばんはぁ」
挨拶さえ交わせば、彼らは彼らで別の席に移るだろう。
あたしも、多分亘もそう思っていた。
しかし、彼らはなかなかカウンターから離れなかった。
どうやら亘は会社では人気者らしい。
次々と変わる話題は、会社関係のことから芸能の話までと幅広く、その大半はあたしにはわからない内容だった。
でも亘は、時々冗談を交えながら彼らに応えていた。
あたしといるときとは違う、もっとテンポのいい生き生きとした表情で。
同じように隣に居るのに、さっきの亘とは別人のように見える。
だけど、これが亘だったかもしれないとも思う。
高校の時も、快活で友達と騒ぐことが好きな人だった。
いつも皆のまとめ役で、テキパキと何でもこなしていて。
……そうだよ。
亘はずっとそうだったんだ。
あたしに合わせてくれてたから、のんびりで内向的に見えていただけ。