梅酒で乾杯


 八月下旬、照りつけるような日光が道路にくっきりした陰影を作る。

暑さのせいか、泰明くんはアイスを一日に何度も買いに来る。

ほぼ一緒に進んでいた自動車学校は、彼のほうが一足先に卒業してしまった。
あたしがサボっていた期間の代償だろう。

先日見せてもらった運転免許証は、悔しいくらいに嬉しそうな笑顔だった。


亘も相変わらず心配そうにあたしの様子を見に来るけれど、その回数は減り、触れ合いも激しさとは縁遠い慰め合いのようになっていく。


あたしはそれに気づきながら、どこかで傷つき、どこかで諦め、どこかで受け入れていた。


亘はあたしを大事にしてくれる。

壊れ物を扱うように、大切に保護してくれている。
それは共に歩く人間への愛情ではなく、守らなければならない子供に対するような形で。

環境が変わって、あたしと彼の間を流れる時間の速度は完全に変わってしまっていた。

亘が自覚しているのかわからないけれど、彼を癒やすことのできる女の子が彼の同じ時間の流れにいることも、あたしは何となく気づいている。


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