梅酒で乾杯

 あたしと泰明くんがこんな風に親しくなったきっかけは、バイト先のコンビニだ。バイトしているのはあたしで、泰明くんは近くの住人。

彼は毎日……と言うよりは一日に二回も三回も買い物にやってくる。
アイスを一つだけとか夕飯用と思われるお弁当とか。まるで、この店自体を冷蔵庫だと思っているかのような頻度で。

互いに顔見知りになるのは、至極当然の流れだった。

 話をするようになったのは、自動車学校に通いだしてから。
学科講習でたまたま隣の席に座って、「あ」と思わず言ってしまったら、あっちも「コンビニの人っすよね」と笑った。それ以来、お店でもちょこちょこお話する間柄になっている。

とはいっても、彼について知ってる事はそんなにない。

住んでるところはコンビニの近く。
この辺りではそこそこの国立大学の二年生ってことくらい。

そこは、あたしが二回受験して二回とも落ち、あたしの彼氏がこの春卒業したばかりの大学でもある。


「昨日の夜一緒に居たのが実加さんの彼氏?」


泰明くんがサラリというので驚く。


「ええ? なんで知ってるの?」

「丁度コンビニ行こうと歩いてたら、一緒に店から出てきたのが見えたんだ。彼氏と一緒だから声掛けなかったんだよ」

「ああ」


昨日はバイトの上がりの時間に、丁度仕事が終わったからと彼が来てくれたのだ。
久しぶりに会えて嬉しかったあたしは、周りなんか全然見えていなかった。

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