梅酒で乾杯
泰明くんはあたしが梅をかごに入れるのを見て、不思議そうな顔をする。
「実加さん、梅どうすんの?」
「うん、今年は梅酒を作ろうと思ってね」
「梅酒? 自分で?」
「そう。ほらここに作り方あるじゃん。スローライフを目指すあたしとしてはね、このくらいの事ができないと」
「へぇ」
もちろん梅の近くに置いてある『梅酒の作り方』の紙も一緒にかごに入れる。
これを見ないと作れないもん。
「すごいねぇ、実加さん」
泰明くんは、ゆるく笑うとその近くの新商品コーナーからチューハイをかごにいれた。
「泰明くん、未成年じゃないの?」
「今年二十歳になるんです。もういいっしょ」
「はは。そうだね」
自分の時だって、厳密に二十歳まで飲酒しなかったって訳じゃない。
でも今は厳しくなってるから、外じゃだめだよ、と一言忠告した。
そんな風にそれぞれに買い物を済ませて、スーパーを出た所でサヨナラをする。
「実加さん、明日はバイト?」
「うん」
「じゃあ買い物行くね」
「はは。まいどあり」
無理に送りますって言うでもない泰明くんのスタンスはすごく楽で、とても男の人といるという気分にならない。
どちらかと言えば弟というか、やっぱりペット?
いや、これは泰明くんの人格だね、きっと。