恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜


その後、お湯が沸騰して蕎麦を入れる所まで、私の隣で監視し続けた課長。

乾麺投入後にタイマーを計りだし、麺つゆの希釈の割合だの、薬味のネギを刻めだの……とにかく疲れるほどの注文の多さにうんざりしていた。


やっと、テーブルにざるそばを用意出来た頃には、すでに疲れ果てていた。


「山田、とっとと座ったらどうだ」

見ると、ちゃんと私の分までツユの用意がしてある。


「あ、いいんですか?」

「当たり前だ。お前の勘に頼って茹でた麺とパッケージ通りに茹でた麺がどれだけ違うか味わえ」

四人掛けのダイニングテーブル。

課長の真向かいに座ることが、正直嫌だったので斜め向かいに座った。


「いただきます」

ツルっと蕎麦をすする。

ーーーん? 美味い! なんかいつもと違う喉越しかも!


「どうだ。美味いか」


「美味しいです。高い麺ですか? それとも…わかった! 麺つゆがいいのかも。メーカーどこのですか?」

「うちのメーカーの麺つゆだ」

「あ〜そうですか。へぇ」


バシン。

テーブルに箸を置く課長。


「山田、お前、真面目にやれ」

「え? 不真面目でしたか?」


「……もう、いい。さっさと食って帰れ」


「はい、そうします」


私もうんざりしたが、表情から察するに課長も相当うんざりしたようだった。

< 10 / 223 >

この作品をシェア

pagetop