恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「なるほどな……」

「ですよねぇ」

ーーーやった。打ち負かしてやった。阿呆らしいのよ。全く。


「気に入らない」


「はい?」

「課長に意見するのか、山田」


「意見と言うほどのものでは……」

課長は身を乗り出し、私の顔の真ん前に自分の顔を出してきた。


「随分と偉いんだな。山田」

「偉いとかではないです。それに、社内でもないですし……。ここは少し大目に見て貰ってですね。ご近所さん同士ですから、仲良く……そうだ。会社以外ではタメ語でもイイとかにしませんか?」


「山田、俺にタメ語?」


「……いえ、提案です。単なる……気にしないでください」


私をじっと見たまま動かない課長。


「それなら、山田さん。会社以外では上司と部下では無いなら、ただの……」

課長の黒目がちな瞳に私が映っている。

「ただの男と女か?」

「なんか、その言い方は……含みがある気がしますが……」

課長は手を伸ばして、がっしりと私の肩を掴んだ。

「か、課長?」

「課長じゃない。上野さんだろ」

「はあ、上野さん」


「いいだろう。会社以外ではタメ語で良いことにしてやる。その代わりに……」


「代わりに?」




「お前と俺が一緒のマンションに住んでるなんて、良い笑い者だ。会社の奴にはなるべく話すなよ」

「話しませんよ」


ーーーせこい。小さい! そんなこと気にするなんて。器の小さい男すぎるっしょ!
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