恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
3階に着くと、課長が降りようとしていた。課長のジャケットの袖を引っ張り引きとめる。
「課長! 忘れるとこでしたけど、霊ですよ、霊。まさか見えなかったでしょう? 今朝、私の家で」
「あ? 見えなかった。安心しろ」
「は〜良かった。すっかり忘れてましたけど、私それが聞きたかったんですよ」
ーーーはあ、助かった。霊なんかいるわけないもんね。いたら困るし。
「俺を引きとめたのは、それだけか? 本当は他にも理由があるんじゃないのか?」
おり損ねた課長を乗せたままエレベーターの扉はしまり、また動き出していた。
エレベーターの中で向かい合う課長と私。課長が私との距離を徐々に縮めてくる。
じりじりと後ろに下がって、エレベーターの壁に私の背中がピタリとついた。
「本当は、俺を引きとめたかったんじゃないのか? 話を下手に持ち出さなくても素直になればいい」
私を見ながら私の髪に触れる課長の指先。
課長の後ろでエレベーターのドアがゆっくりと4階で開いた。