恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「か、課長……4階に着いたんですけど」
エレベーターの壁に追い込まれている私。
「ユイカ、そろそろ俺に落ちてみる気になったか?」
「なりませんから! 早くどいてくださいよ」私は、課長の魔の手から逃れるようにしゃがんだ。それから、花束のセロファンをカサカサ言わせて、そのまま腰を屈めてエレベーターを出た。
出てから振り返ると課長も着いて降りていた。
「課長、なんで降りてきたんですか?」
「成り行きだ。上で誰かがエレベーターを呼んでるみたいで、下に行かないようだから降りてみた」
「はあ、そうですか。では、お疲れ様です。先に失礼します」
「ああ、おやすみ」
呆気なく帰ろうとする課長に私は、驚いていた。
ーーーあれ、呆気ないじゃん。随分、引き下がるのが早くない?
課長の背中を見ながら、どうかしてしまっている私は課長に声をかけていた。
「課長、焼き肉を奢ってもらったので……お茶でも飲んで行きませんか?」
自分で言いながら、自分の必死さに笑えた。
ーーー引きとめること無いのに。馬鹿みたい。