恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

「か、課長……4階に着いたんですけど」
エレベーターの壁に追い込まれている私。

「ユイカ、そろそろ俺に落ちてみる気になったか?」

「なりませんから! 早くどいてくださいよ」私は、課長の魔の手から逃れるようにしゃがんだ。それから、花束のセロファンをカサカサ言わせて、そのまま腰を屈めてエレベーターを出た。


出てから振り返ると課長も着いて降りていた。

「課長、なんで降りてきたんですか?」

「成り行きだ。上で誰かがエレベーターを呼んでるみたいで、下に行かないようだから降りてみた」


「はあ、そうですか。では、お疲れ様です。先に失礼します」


「ああ、おやすみ」


呆気なく帰ろうとする課長に私は、驚いていた。

ーーーあれ、呆気ないじゃん。随分、引き下がるのが早くない?

課長の背中を見ながら、どうかしてしまっている私は課長に声をかけていた。


「課長、焼き肉を奢ってもらったので……お茶でも飲んで行きませんか?」

自分で言いながら、自分の必死さに笑えた。

ーーー引きとめること無いのに。馬鹿みたい。









< 141 / 223 >

この作品をシェア

pagetop