恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「いいじゃないですか! 少しくらい寄れば」

「今日は、やめとく」

「もしかして!」
こんなに呼んでも、うちに寄りたくない意味は……。



「課長! ほんとは見えたんでしょ! いたんですね? うちに」

ーーー霊が見えたんだ。だから、うちに入りたくないわけね!

「は? 違う……」
青ざめて冷や汗をかく課長は、眉間に皺を刻んだ。


「腹が痛くなったんだ。自分の家で落ち着いてしたいんだ。それだけだ。お前だって引っ越したばかりの我が家のトイレに腹をくだした客を入れたくないだろ」


ーーーまじ? 腹くだし? はあ、そうならそうと……。


「早く言ってくださいよ! どうぞ、早く帰ってくださいね」


ーーー全く、信じられない。ムードとか考えないのかなぁ? 仮にも惚れさせようと思う女に『腹が痛い』とか青ざめて冷や汗まで出して言っていいと思うの?


走って帰る課長の後ろ姿は、引っ越してきた日のスウェット上下でボサボサ頭の課長を思い出させてくれた。


ーーーそうだった。上野課長は会社ではスカしてるけど、普段はダサい人だった。背中に哀愁の漂う感じの……。


鍵を開けながら、正直ホッとしていた。

ーーー良かった。上野課長を誘わなくて。へんな意地で誘ってたら大変な事になってた。馬鹿馬鹿しい。好きでもない男を家に気軽に入れようとするなんて、どうかしていた。

ここは、私の城なんだ。夢いっぱいの城。妙な男を入れて汚したくない。


もちろん、腹くだし男に城のトイレは汚されたくないし、そんなことは絶対にあってはならないことだ。


★教訓

恋愛にムードとタイミングは大事である。
もし、それが合わない相手なら……
それは問題外の人。そういうことだ。






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