恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
長い呼び出し音の後、唸るような声が聞こえてきた。
「う〜〜ん、なんだよ。山田」
「課長、寝てる場合じゃないんですよ」
「……」
「課長、可愛い部下には賢くなってもらいたいですよね?」
「……なんの話だ」
寝ていた所を起こされて、機嫌が悪そうな声だ。
「課長の持ってる難しくてたまらない本貸してくださいよ」
「ふざけるな。夜中に本を貸してくれだと?! 馬鹿も休み休み言え! とにかく……明日にしてくれ。会社で貸すから!」
半分キレ気味の課長。そりぁそうだろ。私が課長の立場ならやはり、キレてしまう所だ。
「課長! 今ですよ。今じゃないと! 思い立ったが吉日です!」
電話の向こうで、課長はしばらく無言だった。
それから、大きなため息が聞こえてきた。
「……わかった。取りに来い」
それが、課長の精一杯の譲歩的なアイディアらしかった。
「課長が届けに来てくださいよ」
「何! なんで俺がわざわざ、お前のために本を届けにい……ん? 待てよ……お前……さっきも相当しつこかったし、今もまた俺を家に誘って……」
再び無言になる課長。
それから少しして課長は、わざとらしく咳払いをした。