恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
課長がやはりスウェット上下で現れた。
手には分厚い辞書みたいな本を手にしている。
「課長、どうも……すいません。頼んどいてなんだけど……寝ながらだと読みにくそうな本だなぁ」
課長が持ってきた本を受け取りながら、つい文句を口にしていた。
「あの、ありがとうございました。では」ドアを閉めようとすると課長が器用に体を玄関内に滑り込ませて来た。
「課長、もう遅いし」
自分が遅い時間に呼んだくせに入りこんできた課長をなんとか追い出したくてたまらなかった。
「ユイカ、本なんか口実にしなくても……会いたくなった。そう言えば飛んでくる」課長は、やはり誤解している。私が課長に会いたくて呼んだと思っているのだ。
「いえ、眠れなくて」
ーーー何から説明しようかな? 面倒くさい。
「眠れないほど考えていたのか? 俺のことを」
「え? いやぁ」
課長の手が伸びてきて私の頬に触れる。
「眠れないなら、丁度いい。眠らなければいい」
「へ?」
私の髪と首筋の間に左手を入れ、課長は私の後頭部をおさえるようにした。右手は、私の腕を掴み自分の方へ引き寄せていく。