恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
下品な気持ち
「最低なんだから! 上野課長って!」
昼に紗季と社員食堂でランチを食べている。
大体の昨夜から今朝にかけての事件のいきさつを紗季に話していた。
課長は本当につまらなそうな本を持ってきて、私が勝手に本を口実にして会いたいから呼び出したと思いこんでいたオメデタイ人であると話した。
抱きしめてきた後、体が反応したとか下品な言葉を言ってたことももちろん話した。
でも、紗季は年下の彼氏が結構肉食系のせいかそうした下品な言葉には、さほど抵抗ないらしかった。
「最低っていうか、上野課長って正直な人だねぇ。意外かも……」
紗季は、下品な課長の話を聞いて何故か好印象を持ったらしかった。
ーーー紗季ってば、やっぱり天然。感心する所がズレてるから!
私は、指で目頭をおさえた。
最近、あの得体の知れない犬のおかげで良く眠れていないのだ。
ポーチからコンパクトを出して顔を映してみた。コンパクトに映る私は、クマが酷くなり薬物中毒患者みたいな顔でげっそりしている。
「顔も酷いじゃん、ねぇ! 今日は紗季の家に泊めてくれない? 犬が怖くて帰れないから……お祓いでもしないと」
「お祓いかぁ……確かに怖いもんね。いいよ。うちなら。でも、うちの家族、うるさいし弟もいるけど……いい?」
「全然大丈夫。むしろ、今は大勢いるところの方が有り難い」
「そ、なら家に電話しておくね」
「ありがとう! 紗季」
ーーー有り難い。紗季みたいな優しい友達がいて助かったわ。お祓いをして清めてからでないと、絶対に帰れない。
目の前で、スマホを手にした紗季の手をすっぽりと大きな手が覆った。
私と紗季の頭上から低い声が降ってくる。
「電話する必要は無い。山田の事は俺に任せろ」
見上げると、白地にブルーのストライプが入ったシャツを爽やかに着こなした上野課長が微笑んでいた。