恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「山田、今朝みたいに俺を頼れよ」
「今朝みたいにとは?」
「しがみついてくれば? 怖いから助けてって、か弱い女の子みたいに」
課長が握った手を自分の方へ引き寄せる。当然、引き寄せられて私はテーブルの中央まで顔を出して中腰の状態になった。
周りの人を気にかけながら、課長に小さな声で意見した。
「課長! 会社で止めて下さいよ。そういう話」
「仕方ない事実だから」
「それに! 手を離してもらえませんか?」
「お前が承諾したら離す」
飄々とした顔の課長。
「何をですか?」
「今からは、全て俺を頼り俺に従うことをだ」
「嫌ですよ。そんなの! 課長に従うなんて冗談でもイヤ」
課長は、更に私の手を引き寄せた。私の瞳を見つめながら言う。
「犬、怖かったよな? さすがに俺でもゾッときた」
その言葉を聞いて、改めて思い出してしまう今朝の黒い物体の姿。
思わず身震いしてしまう。
犬も怖いし、今現在のこの状況と周りの視線も、日毎に大きくなる課長との噂も気になる。気にしたくなくても気になる。
ーーーここは、ひとまず早く手を離してもらわないと。
「う〜〜」
「唸るな。今朝の犬を思い出すだろ」
嫌そうな表情をみせる課長。
周りの人が明らかに私たちをチラチラ見る雰囲気がする。
ーーーだめだ。耐えられない!