恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「わかりました! わかりましたから離して下さいよ」
「……」
確認するように私を見る課長。
何故か課長に見られていると動けなくなる。課長の瞳に吸い寄せられそうになる。
課長に見られていると、理由はわからないが、どんどん自分の体全体がかあっとなるのを感じる。
握られた手が、どうしようもなく熱くなっていくのを止められなかった。
「……熱いな。お前の手」
課長の親指が私の手の甲を撫でた。
「う、生まれつき体温が高くて……ははっ」
課長がやっと手を離してくれたので、私は大きく息をついて椅子に座りなおした。
ーーー私、課長相手に何緊張してんだろ。しかし、馬鹿みたいに熱いな……。
「山田、顔も赤い」
「確かに熱くて……なんか体調が最近おかしいんですよ」
ブラウスの襟元付近をつまんで、首を伸ばす。ブラウスの中に風を送ろうとブラウスをパタパタしてみた。
「山田」
「はい?」
「誘うには時間と場所をわきまえろ」
「え?」
「パタパタするな。上から人が見てたらお前の服の貧相な中身が見えるだろが」
課長に言われて、見上げてみた。確かに食堂は吹き抜けで上の階から見下ろすことが出来る構造になっている。
だが、今上から見下ろしている人は誰もいない。
「いませんし、危うく聞き流すところでしたが貧相ってどういう意味ですか!」
「そのままの意味だ」
「課長、私の服の中身を見てないし。わかりませんよね? 実際の私がどれだけ……」
言いながら、ふと周りの人の視線に気がついた。エキサイトし過ぎて、大きな声になっていたようだ。
「どれだけ? 見なくてもわかる」
課長は立ち上がると、私の近くに顔を寄せた。
「あれだけ抱きつかれたら、お前の胸がどの程度かぐらい把握出来る」
耳元で言われ、沸騰したケトルみたいに頭から湯気が出そうだった。
ーーー言わせておけば! 人がどれだけ貧乳を気にしてるか! くそぉ!!
テーブルの上で拳を握りしめて、課長を睨んだ。
「ま、ジョークだ。……本音を言わせてもらうと……ユイカ、服の中身は俺だけに見せろ」
「? は?」