恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

帰りに課長の車に乗せてもらうとき私は、かなり緊張していた。


ーーー密室だ。二人きりだ。どうしよう。



さんざん、二人きりの場面なんかあったし、今朝は課長の背中に抱きついていた。それなのに、私はどうもマズイ状態に陥っていた。

そうした自分の気持ちは、なんとも恥ずかしく、課長にすっかり負けてしまったような気もする。とにかく、急に気づいてしまった自分の気持ちを今は課長に知られないようにするべきだ。



ーーーそうじゃないと……私なんかひとたまりもない。


まずは、緊張をしていることを悟られないように私は細心の注意を払うことにした。

助手席に座り、姿勢を正して息を小さくする。

ーーー苦しい。息苦しい。


「……山田、どうした? なんかおかしいぞ」

運転席から体を伸ばして自然にごくごく自然に近づいてくる課長。


慌てて窓際に張り付く私を見て課長は、思い切り眉根を寄せた。

「そんなに逃げなくてもいいだろが、さすがの俺も傷つく」

シートベルトをはめて課長は、エンジンをかけた。


ーーー違う、違う。課長……お願いだから、誤解しないで。


課長をすがるような気持ちで見つめる私は、すっかり乙女である。


「山田、お祓いとかは本来なら信じないところだが、しかし全く何もしない訳にもいかないだろ。だから、一番信頼出来そうな霊媒師にお祓いを頼んでおいた」

「ありがとうございます。いつの間に……」

ーーーさすが課長だ。仕事が早い。私の為に忙しくても調べてくれたんだなぁ。


嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。


「土曜日にお祓いの予約したから。それまで俺の家にいろよ。まあ、山田は嫌かもしれないけど我慢してくれ」

「いえ、あの! 私の方が迷惑ばかりで申し訳ない感じです」



運転しながら、ちらっと私をみた課長は怪訝そうな顔をしている。

「山田、やけに殊勝な態度だな。気持ちが悪い」


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