恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「気持ち悪いって……そんな……」
いつもなら言い返せた。なのに、真に受けて凹む私。
「山田、お前ほんとに変だぞ。大丈夫か? まさか、お前何かに取り憑かれたとか?」
「違います」
「そうかぁ? なんかおかしい」
首を傾げる課長。
マンションに着くまで、私は緊張しっぱなしだった。
課長に話しかけられて何をどう答えたのかさえ覚えていない。
ブツ切れ状態の会話だった。
車を降りる時に課長が私の手を握ってきた。
「ユイカ、俺には遠慮するなよ」
心配そうな顔で、そう言われた。
ーーー課長ってば、優しい。でも、たぶん私にだけ優しい訳じゃない。今は私を惚れさせたいから優しいんだ。
車を降りると、さりげなく私の隣に来て手を繋いでくる。
課長の大きな手が私の手を包み込む。合わせた手、触れ合う指が自然に絡み合う。
ーーーわぁ、恋人みたいに繋いでる。嬉し過ぎて頭がボォっとしてくる。
私は、課長と手を繋いでいるだけで倒れそうな自分の体をなんとかまっすぐに保って歩いた。
「……嫌じゃないのか? 手」
「え?」
まじまじと繋いだ手を見つめる課長。
「前は、こんな風に絡めてこなかった。拒否されるばかりだったからな……もしかして、本気で惚れたか?」
笑顔で聞いてくる課長に私は、ぎこちなく笑うしかなかった。
「ははははっ…まさか」
ーーー課長に惚れたなんて絶対に言わない。あり得ないし、自分自身で決めたことだ。課長には惚れないと。