恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
ーーー感動だ。私、初めてかも。男の人に手料理でもてなしてもらったことなんかないんだけど。
唇を噛み締めて涙を我慢しても溢れそうになる想いを、こらきれなかった。
「課長〜」
「ん? どうした? 嫌いなものでもあったか?」
エプロン王子は、私が涙目なので戸惑っているようだ。美味しそうな匂いの漂うスープの入った皿をテーブルに置くと立ったままの私の方へとんできた。
「違うんですよ。課長……こんなに……」
ーーーこんなにもてなしてもらったのは、初めて。感動してます。……心の中では。
「夜は、あんまり食べないんじゃないんですか?」
心の声を飲み込んで、可愛げのない言葉を言いながら、ついでに涙もこらえた。
「今日は特別な日だろ?」
「特別?」
「理由はどうあれ、ユイカが初めて俺の家に泊まる特別な日。だから、俺の気持ちを表現したかった」
課長が私の体を引き寄せ優しくハグする。
「課長の気持ちですか?」
頭を撫でられ課長の肩に鼻をつける。
「そう。俺の凄く嬉しい気持ち」
ーーー課長、凄く嬉しいの? 私が泊まることが特別? ねぇ……課長、それは本音ですか? それとも私を惚れさせる目的の為だけの言葉なの?
課長の背中に手をまわすことも出来ず、ただ、課長からする爽やかなボディーソープの香りを嗅いだ。
課長の香りの元が、今日確実になった。爽やかな香りは、さっきバスルームで私も嗅いで、ついでに使わせてもらったから。
ーーー課長、抱きしめた私は貴方と同じ香りがしますか?
心の声は間違っても発しない。もう、決めたから。
私の体からは課長と同じ香りがする。それだけで充分だ。