恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「細かいし、裁縫とか料理とか……得意って女々しいっていうか……」
ーーー私、何言ってんだろ。これ以上変な事を言ったら、きっと嫌われる。
なのに、追い打ちをかけるように私の言葉は止まらなかった。
「女ですよね。ほぼ……。私、そういう自分より女っぽい男って、苦手なんですよ」
今の私を課長には見ないで欲しかった。きっと嫌な女の顔してる。偏見に満ちてやっかみが激しいブスな女。
まっすぐに私を見ていた課長が、フォークを静かに置いた。立ち上がると「ちょっと悪いな」そういって何処かへ消えた。
ーーー完璧に嫌われた。
課長のことを女々しいとか苦手とか言ってしまった。本当は、そんなこと微塵も思ってない。
裁縫出来るところも料理上手なところも凄いと思う。こう見えて、私は素直な所もある女だ。自分が出来ないものを上手にこなす人をちゃんと尊敬出来る。
課長は細かい性格でネチネチ話が長くて、変わってる所も多い。でも、今じゃあ、そんな課長の性格も課長の一部として認めてる。完璧な人間なんていないんだから。
私なんか不完全の塊みたいな人間だし。欠点は、性格だけじゃない。鼻ぺちゃだし、胸へちゃだ。
凹みだらけの人間に比べたら、課長はロマンチストだし、細かいのは裏を返せばマメだとも言える。
つまり、課長がモテるのは、それだけの理由があり、それだけの魅力ある人間だからだ。
私は、スーツケースに出したものを詰め込んだ。
ーーーこれ以上、課長は私なんかの顔も見たくないはず。
課長がトイレにこもったまま出て来ない間に私は、自分の家に帰ることに決めた。
玄関をなるべく静かに出て、私は廊下をガラガラとスーツケースを引っ張りエレベーター方向へと歩いた。