恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
カサカサという音で、目が覚めた。
ーーー何だろう。この布をこするみたいな音。
少しして、視界の隅に黒いものを見つけていた。
ーーーまさか! また出たの!
恐怖に体が凍り付く。実際、体は全く動かなくなり声も出なかった。
唯一動かせる目玉をギリギリまで動かし黒い物体を探した。
ーーー近くにいる! どこ?!
黒い物体は犬の形をして、もやもやと雲のような状態で動いている。
枕の近くにいて、カサカサとシーツを前足で触っている。
やがて、足をベッドのへりにかけて、私を覗き込むみたいに体を伸ばした。
「ぅ〜ウワンッ!!」
突然、耳元にきて大声で吠えた黒い犬。
ーーー誰か! 助けて!
心の中から懸命に出した叫び声を聞いたかのように、インターフォンが突然鳴り響いた。
「山田! 入るぞ……全く開けっ放しだったぞ。いくら襲われないからって言ってもな、無用心過ぎるだろ」
課長の声が聞こえてきて、廊下からの足音が近づく。