恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「若い女性だったんです。丁度山田さんくらいの年齢で犬を飼ってました」
知らないうちに痛いほど、膝の上で両手を握りしめていた。
「……亡くなったんです。お風呂場で。心臓発作だったかな? で、シャワーのお湯が流しっぱなしで」
いちいち私の顔色を見る営業マン。
「犬が風呂の戸を開けてしまって……シャワーの水が浴室から外に向かって流れまして、下の階まで……水漏れがありました。水漏れについては説明しましたよね?」
「……はあ……」
確かに住人の不注意による水漏れ事故があった話は聞いていた。
欠陥による水漏れではないから、その件は大して気も止めなかったのだ。
「あ、まさか、あの風呂って……」
亡くなった女性には悪いが、赤の他人が亡くなった風呂を使ってるかと思うと怖いし、気持ち悪い。
「それは、もちろん変えてあります。すべてリフォーム済みで大丈夫です」
「……あの、その飼っていた犬は、どうなったんです?」
前の住人が風呂で亡くなったのは、正直ショックだ。だが、確かに相場よりだいぶ値段は安かった。だから、購入できたのだ。ポジティブに考えれば殺人事件や自殺では無かっただけマシだ。
購入してしまった今、いい解釈をして住み続けるしか方法は無いのだ。
問題は、あの犬だ。
霊的な犬に関してはポジティブに考えられない。毎夜、犬が現れるのは勘弁してもらいたい。