恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「それなんですが、管理人が部屋に入った時には……」
「時には?」
ゴクリと唾を飲み込む。
「ご主人のそばで犬も息絶えていました。必死に湯に浸かってしまったご主人を助けようとしていたようですが……滑って頭をうってしまったと……」
「……あの、亡くなったのはいつ頃ですか?」
「はあ、確か……」
営業マンは、パソコンをカタカタして画面を眺めた。
「二年前の11月1日です」
「11月1日って……明日じゃないですか!」
目眩がした。
「私があのマンションを契約するとき知ってたんですよね? 事故があったって。それで、言わないなんて酷い!」
「いやあ、酷いって言われましても……その事故後に1人入居者がいましたから。事故後、入居者がいた物件に限り、その後の入居者には……そうした事故の件も言わなくてもいいことになってまして……」
「事故の後に入居者がいた? 」
「ええ、まあ、すぐに越しましたけど」
営業マンは、薄ら笑いを浮かべた。
「すぐに越した? 何故?」
「さあ、引越しの訳までは知りません」
ーーー事故。私くらいの女性が風呂場で亡くなり、後を追うように飼い犬も死んだ。
その後、1人入居者がいたが、すぐに越した……。
不動産屋の話で、あのマンションに関する真相はわかった。だが、知った所で気分が悪くなるばかりだ。
ーーー真相を知っても犬の霊が現れ無くなるわけじゃない。じゃあ、どうしよう。