恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
不動産屋に寄った帰りに管理人さんに話を聞いてみた。
白髪頭の管理人さんは、神妙な顔で私の話を聞き、ふむふむと頷いた。
「覚えてますよ。4階ね。私は、このマンションが建ってすぐに管理人になりましたからね」
「ええ」
「美人でしたよ。ビックリするくらいのね。もうすぐ結婚だったんですよねぇ。可哀想に。……郊外の一軒家に引越しして結婚生活を送るって……犬の散歩の時にお会いしたら嬉しそうに話してました」
「なんだか……気の毒過ぎますね……」
聞けば聞くほど、可哀想になる話だ。
「彼女の恋人も悲しんだでしょうね……」
「そうですよ。なんせ突然だったしね」
「はあ……彼女も犬もこの世に未練があったんでしょうね?」
「そりゃ、そうでしょう。無念だったんしゃないかなぁ」
ーーー無念。その気持ちはわかる。だが、私には何も出来ない。
霊になって私の前に出て来られても、困るだけだ。
お祓いしかないか……。残された頼みの綱は、お祓いしか無いと思えた。
管理人さんに挨拶して、ふと道路を見ると、マンションを見上げる背の高い男性がいた。
男性は、指先で目尻の辺りに触れ鼻水をすすりあげた。
ーーー泣いてる? もしかして……。
その男性に話しかける気になったのは、まさに女の勘だった。マンションを見上げ涙する男性。今日、会うべくして会えた人だと思えた。