恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

不動産屋に寄った帰りに管理人さんに話を聞いてみた。

白髪頭の管理人さんは、神妙な顔で私の話を聞き、ふむふむと頷いた。


「覚えてますよ。4階ね。私は、このマンションが建ってすぐに管理人になりましたからね」


「ええ」

「美人でしたよ。ビックリするくらいのね。もうすぐ結婚だったんですよねぇ。可哀想に。……郊外の一軒家に引越しして結婚生活を送るって……犬の散歩の時にお会いしたら嬉しそうに話してました」


「なんだか……気の毒過ぎますね……」

聞けば聞くほど、可哀想になる話だ。
「彼女の恋人も悲しんだでしょうね……」


「そうですよ。なんせ突然だったしね」


「はあ……彼女も犬もこの世に未練があったんでしょうね?」


「そりゃ、そうでしょう。無念だったんしゃないかなぁ」


ーーー無念。その気持ちはわかる。だが、私には何も出来ない。

霊になって私の前に出て来られても、困るだけだ。



お祓いしかないか……。残された頼みの綱は、お祓いしか無いと思えた。


管理人さんに挨拶して、ふと道路を見ると、マンションを見上げる背の高い男性がいた。



男性は、指先で目尻の辺りに触れ鼻水をすすりあげた。


ーーー泣いてる? もしかして……。

その男性に話しかける気になったのは、まさに女の勘だった。マンションを見上げ涙する男性。今日、会うべくして会えた人だと思えた。


< 184 / 223 >

この作品をシェア

pagetop