恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

口を開きかける課長。

「山田は、俺の……」

ーーー俺の? なんて言い出す気?

ハラハラしながら、課長を見上げた。


ーーー間違っても俺の女だとか言わないでよね! そんなセリフは、赤面ものだし。小説かドラマでしか言わないから!


その時、どこからともなく運動会の入場時に流れるような音楽が流れてきた。

ツッタカターツッタカターツッタカター


あの404号室の女性のフィアンセがポケットを探り、申し訳ない顔をしてみせた。

「すみません、ちょっと……」

私たちから離れながら、スマホを耳に当てて歩いていく。

ーーー良かった。あの軽快な音楽で救われたわ。そうでなければ、課長の陳腐なセリフを聞く羽目になってたし!


ほっとしていると、課長が話しかけてきた。

「思ったより大丈夫みたいだな」

「え?」

「家の真相、聞いたんだろ?」

「あ、はい。……まあ、大丈夫ではないですけど」


ーーーなんだ。一応心配してくれてたんだな。いい人じゃん。課長。


「大丈夫でなければ、見知らぬ男に手を握られて笑顔でいられる訳がない」

私は、課長をキッと睨んだ。

ーーー前言撤回! まだ、そこにこだわるの?! しつこいって!






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