恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
課長の部屋には、当然ベッドがひとつだ。
「山田、お前は当然……」
課長がソファをチラッと見た。
ーーーわかってますよ。当然、ソファに寝るんですよね。はいはい。
課長の手にしている掛け布団を渡して貰おうと手をかけた。
「お前は、客だ。ベッドを使え」
「え、いいんですか?」
「俺はソファに寝ろと客には言わない」
「あ、そういうところ、課長らしいですね。律儀というか……」
「わかったら、寝室へ行け」
「はい、ありがとうございます。ベッドお借りしますね」
寝室へ歩きかけると、課長が声をかけてきた。
「大丈夫だと思うが、怖くなったら…すぐに呼んで構わない」
「はあ、どうも。ご丁寧に」
頭を下げておいた。頭を下げてから思い出した。犬の霊。耳元で吠えられたという恐ろしい出来事。
ーーー怖い? 怖いよ。すでに。なんといっても霊らしきものが本当にいた訳で……。場所が変わっても私についてたら? 間違いなく今夜も現れてしまう。
思わず身震いして、立ち止まった。
「あの、もう少し……起きて話とかしません?」
ソファに布団を置いた課長は、私を振り返った。