恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
玄関は、当然水浸し。廊下を歩くたびにピチャピチャと水がはねた。
ーーー私の城が………。
目眩がしてふらついた私を課長が支えてリビングへ行くと、私をソファに座らせた。
後から阿部さんが入ってきた。
「阿部さん……この状態になった経緯を聞いても? 」
冷静に聞き始める課長。
「……はい」俯いていた阿部さんが、ようやく息を吐き顔を上げる。
「……逢えました……七郎にも……奈緒にも」
涙を溢れさせる阿部さん。
嗚咽しながら膝をついてしまい、肩を上下させる。
「良かったですね……でいいんですよね?」
阿部さんの肩に手を置いて、課長が聞いた。
阿部さんは、こくこくっと首を縦に動かした。
「うっ、あ、ありがとう……ございました……」声を絞り出すようにする阿部さん。
あんなに泣く男の人を初めて見た。そんな状況では黙るしかなかった。
水浸しになってしまった部屋の愚痴や誰に言えばいいのやらわからないが、絶対に言いたい文句や色々な言葉を飲み込まざるをえなかった。
★教訓
真実は、必ず存在する。
例えそれが信じられない出来事であろうと無かろうと関係ない。
人生とは、時に残酷で不条理なものなのだから。