恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

「忘れるのなんか無理って思ったでしょう? でもね、阿部さん。彼女が望んでるんです。貴方が自分を忘れて幸せな人生を歩むことを」


「そんなの嘘だ。覚えておいて欲しいに決まってる。自分がこの世に存在していたことを忘れてほしい人間なんているわけないんだ!」

阿部さんは、自分の肩に置かれた課長の手を振り払った。




「彼女は、嘘を言うような人間でしたか?」


「え……」


「彼女が嘘を言う人間なら、わざわざ霊になっても嘘を言うでしょう。でも、奈緒さんは違うのでは?」


阿部さんは、静かに目を伏せた。

「……奈緒は、嘘が嫌いでした。自分もつかないから、俺にもつかないでって」



「無理……なんて諦めないで、奈緒さんを幸せにしてあげてくださいよ。阿部さん」

ニコリと微笑む課長。


ーーー奈緒さんを幸せに?

じっと、課長を見つめていた。なんとなく課長が神々しく感じてきた。
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