恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

「奈緒を幸せに?」


「そうですよ。奈緒さんを幸せにしてあげたかったんでしょう? 結婚したいと思うほどに」

「えぇ」


「亡くなったからって、幸せにしたいと思う気持ちも無くしたんですか?」

阿部さんは、唇を噛み締め課長を見ていた。
「奈緒さんは、亡くなってからも貴方を幸せにしたいと願っているんじゃないですか? だから、忘れてほしいって……」

阿部さんの頰に再び涙がつたった。

「結婚するときに誓いの言葉ってありますよね? あれ、俺は少し違うと思って」

課長は、ふうっと息を吐いた。

私を見て目を細める課長。

「でもね、俺も最近なんですよ。俺が誓いの言葉に違和感を感じるようになったのは……」

また、課長は阿部さんの方を向いた。

「病気でもビンボーでも、そうじゃないときも、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?ってね。どっちかが先に死んだ時の誓いは、あえて立ててないんだ。大体な雰囲気の誓いですよね。だから、俺は異議あり」
課長は、軽く手をあげた。


「大体のアバウトすぎる誓いの言葉に付け加えたいね。どちらか先に死んだ場合も永遠に互いのことを思い合うことって…」

ーーー何、それ。死んだ時の話もつけたせってこと?

私は、あんぐりと口を開けた。

「先に死んだ方は、のこされた相手が新たな幸せを掴むのを応援するべきだし。のこされた方は、先に死んだ相手が死にきれずに未練なぞ残さないで天国へ安心していけるように一刻も早くうじうじしないで、元気な姿を亡くなった人に見せるべきだ」

阿部さんは途方にくれた顔をしていた。


ーーー合ってるのか、合ってないのか、理解に苦しむような考え方だ。課長らしい。

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