恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
ずぶ濡れな阿部さんを課長の服に着替えさせ、阿部さんは、自分の家に帰ることになった。
課長の服を着て歩いて行く阿部さんをマンションの下まで送りに出ていた。
少し肩を落として歩いていた阿部さんが振り返り、私と課長に向かって大きく手を振ってきた。
「俺! さっきの言葉、わかるような気がしてきました。だから、人生かけて奈緒を幸せにします! もう、無理とか……絶対言いませんから!」
静かな住宅街に阿部さんの声が響いた。
ーーー迷惑なんだけど! 大声すぎる!
「迷惑だな。あいつ」
課長が苦笑する。
「まあ、今夜だけならいいんじゃないですか? でも、なんで今夜は3時45分じゃない時間に出たんだろ?」
いつも犬の七郎が現れる時間は、3時45分と決まっていた。
「その時間は、七郎が死んだ時間なんじゃないか? 奈緒さんは、バスルームで入浴時に亡くなったんだ。霊が死んだ時間に現れるなら、3時45分なんかより早い時間だろう」
「は〜あ、たぶん、奈緒さんも七郎も阿部さんに言いたいこと言えたし……もう成仏して出てこないといいんですけど……出るたびにあんな水浸しになったら」
そこまで言って私と課長は、顔を見合わせた。
「「水だ!」」
すっかり、忘れていた。
水浸しの床をなんとかしなくては!
私と課長は、急いでマンションへ入っていった。