恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「あ、えっと」
「俺のベッドに寝たいなら、くればいい。それとも……」
立ち上がり私を抱きしめる課長。
「俺にいてほしいなら、いくらでもいてやる」
「えっと、結構です。大丈夫です。あの自分の城で寝ます。今日から悠々自適に」
課長の胸を両手でおしやる。
「寂しくなったら、お前が来ればいい。俺はお前より忙しいからな」
「大丈夫です。寂しくなりませんし。もう、プライベートでは迷惑かけませんから」
「そうか? なら安心だ。じゃあ、帰るとする」
玄関へ向かう課長の背中をなんだか切なく見送っていた。
ーーーやだ。私? 寂しいとか思ってる? まさかね。
自分の気持ちが出てこないように、私は課長の背中から目を逸らした。
玄関のドアが閉まると、急に静かになった部屋。がらんとした空間。
1人の城。私だけの憧れで夢の城。
ーーーやっと、平和に暮らせる。
そう思うのに、やけに1人だと広く感じてしまう空間に私は戸惑っていた。