恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜

アンケート用紙が回ってきて、隣の課長に渡す時に指先が触れた。


ほんの少しだ。

なのに、手にしていたボールペンがテーブルに当たり、かたかた震えた。

「おい、かたかたうるさいぞ」
顔を近づけて注意してくる課長。

「ひっ!」

慌てて体を課長から離す。

ーーーどうしよう。震えが止まらない。いい歳して……こんなに震えて……馬鹿みたい!

それでも、今度は膝がガクガクしだした。

「すいません! あのちょっとトイレに」

これ以上、課長のそばにいられない。いたら、私が課長に完全に負けたのを知られてしまう。


それに、課長は私なんか好きじゃない。私にちょっかい出すのは、なびかない女をおとしたいから。ゲームみたいに楽しみたい、それだけの話。


だから、決めたのに。

傷つきたくないから、決めたのに。

立ち上がり、廊下に出てから震える唇を噛み締めた。


< 207 / 223 >

この作品をシェア

pagetop