恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「下……。お前、わざと連発して言っただろ?」
わなわなと震えるほどに課長は、おかんむりだった。
「まさか! ただ、違いますよ。ここは4階ですよって、酔っ払ってる課長に教えただけですし」
「俺を勝手に酔っ払いにするな。それとここが、404号室だという縁起の悪そうな号数な部屋なのも承知している」
不敵な笑みを浮かべる課長。
「ど、どこが、縁起悪そうな号数なんですか!」
確かに404号室。手放しで喜べない数字ではあった。だが、たかが数字だ。
このマンションに住む! そう決めたから実行する。決めたことは、やり遂げないと意味がない。
404という、何と無く縁起が悪そうな号数だということだけで、他の部屋より遥かに金額が安かった。しつこく不動産屋にも確認した。不吉な事件は、一切ないと言う言葉を信じて契約したのだ。
ーーー人が気にしていることを言うなんて! 最悪な男!
「悪そうだろ? 404、死を死……で償う。あるいは……死」「やめてください!」
呪われた語呂合わせを、鬼の首を取ったように調子に乗ってベラベラと言い出しかねない課長が心から憎たらしいと思った。
完全にテンションが低くなった私に課長は、言った。
「山田、入るぞ」
うなだれている私の横を通り、玄関で靴を脱ぎ何度も来たことがあるような足取りで廊下を歩いていく課長。
「! 課長! なんですか! 勝手に入らないでもらえます?!」
必死に追いかけて、課長のジャケットの裾をやっと捕まえた。