恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「か、課長?」
私が勤める食品メーカーの直属の上司らしき人物が、そこにいた。
「……お前、ストーカーか?」
目の前で私を憮然と見下ろす上司に酷似した男性が、いきなりそう言ってきた。
ーーーやっぱり、課長だ。声が上野課長だもん。
「まさか! 上野課長に私がなんでストーカーするんですか?!」
グレーのトレーナー上下を着て、脇腹を指でぽりぽりかいている男性は、何度瞬きしてもむさ苦しいばかりだ。
ーーーいつものあのスカッとした上野課長じゃなくない?
驚いていた。
「知らない。ストーカーとは、ごく身近にいる奴がなるらしいからな」
ーーーだれが、こんなダサい男のストーカーになるのよ! 頭もボサボサだし。しかし……あの上野課長が、こんなにダサいなんて会社の皆が知ったら驚くだろうなぁ。
そう思ったら、笑いそうになっていた。
「何が可笑しい」
「え? あ、大丈夫です」
「答えになってない。何が可笑しいんだ? と聞いてるんだ」
ーーー相変わらず、細かいなぁ。いいじゃん。笑ったって。
「細かいっていわれるのは、好きじゃない。大体、山田、お前はいつもいい加減なんだ」
ーーーやだ! あれ、私、細かいって口に出してた? それにうざいのよね〜会社じゃないのに説教?
身構えた私に、課長は気がついたようだった。
「……まあ、いい。で、ストーカーじゃないなら、なんなんだ?」