恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
まさか……
こんなに……?
テレビの格闘技番組で仕入れた知識。相手の顎をパンチすれば、脳が揺れるって。
しかし、私ごときがくりだしたパンチがヒットしたせいで目の前にいた課長が、ガクンとなり、ぐらついて倒れたのだ。
「課長! マジですか? うわっ、気絶してる? え、どうしよう!!」
私は、ダイニングテーブルの横に倒れた課長の隣に座り、アタフタして課長の顔を掌で仰いだ。
ーーー救急車よね、気絶したんだから。死なないよね? 死んだら困るし……死んで無くても酷い状態なら、私、傷害罪とかになるかも! どうしよう!
それでも人命第一だと思い、119番に電話しようと立ち上がりかけた私の手首が、ふいにガシッと掴まれた。
「きゃああああああぁ!!」
幽霊に掴まれたら、きっとこんな叫び声をあげそうな気がする。
「……おい、山田。……うるさいぞ……」
私の手首を掴んだのは、幽霊ではなく気絶したはずの課長だった。
「課長! 良かったぁ、死ななくて」
私は、安堵のあまりに倒れたままの課長に抱きついていた。