恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「はあ〜?」
慌てて立ち上がり、スカートの乱れを直し汚れをはたいた。
「か! 勝手に見ないでくださいよ」
「勝手に見せないでくれ」課長は、折りたたまれてしまったパイプ椅子を直した。
「座れ」
「……」
仕方なく座ると、課長は聞いてきた。
「今日は、確か残業ないだろ?」
「……」
「なら、真っ直ぐ家に帰れるな?」
まるで、子供に諭すみたいな言い方だった。
ーーー黙ってたけど、何? 今夜空けとけ? 真っ直ぐ家に帰れ? 愛人か何かと勘違いしてない? この人。
「あの、こう見えて私、多忙でして残業が無くても約束があるので……」
思い切り息を吸い込んだ。
「今夜は空いてませんし。真っ直ぐ家に帰りません」
少し私を意外そうに見つめてから課長は、ふっと笑った。
「そうか。忘れてたが……山田も年頃の女性だしな。デートの約束くらいあるのが普通だろうな」
「え、デート? そう、デートですよ。もちろん、年頃ですし毎日忙しくて……はははっ!」
ーーーヤバイ。見栄はってしまった。これじゃあ、マジでどっか寄ってから帰らないといけない流れだ。
「そうか、ならいつでもいいから、都合のいい時にうちに顔出せ。新しいマットレスがあるから、それをお前にやる」
ーーーマットレス?
「ベッドに柵をつけるのが嫌なら、落ちても大丈夫なように壁じゃ無い方にマットレスを敷けばいいと思ってな」
ーーーなんなのよ。早く言ってよね。紛らわしい言い方ばっかりするからさ〜。
「で、お前のデートの相手は誰だ?」
若干楽しそうに見える課長の顔が、なんとも嫌味この上なくて、私はよせばいいのに嘘をついていた。
★教訓
追い込まれても嘘はつくべきではない。それが更に自分を追い詰めてしまうから。