恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
ーーーこれは、黙っておく手はない。
「……やめてもいいですよ。神島課長のデート。でもなぁ……」
立ち止まり、やんわりと上野課長の手に握られた手をほどいた。
「でも、なんだ……」
「神島課長って、優しいんですよね〜。私の好きなものを何でも奢ってくれるっていうし」
「呆れた奴だな。奢ってもらうから付き合うのか? そういう所に男の下心を感じないのか?」
魚屋の前で向かい合い話をしていたら、魚屋さんがじっと腕組んで見ているので私は上野課長のジャケットの袖を引っ張り「下心?! ちょっと、ここ、店の前ですから……移動しましょうよ」と提案した。
マンション方面へ歩きながら、
「上野課長、下心ってやめてくださいよ。いやらしい」と眉間に皺を寄せて嫌悪感を露わにした。
「ないとでも思ってんのか?」
先を歩く課長が振り返った。
「上野課長は、知りませんけどね。神島課長は下心なんてありませんよ。あったとしても誰かさんみたいに露骨には言いませんから」
課長が私に近づき、私の顔にぐいっと顔を寄せる。