恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
山田、山だ!
マンションに帰ってから、もんもんとしていた。
ーーーなんか……。
椅子に座りダイニングテーブルに並べた上が凹んだ白桃缶をじっと見つめた。
ーーームカつく!!
白桃缶をぐっと掴んで、壁に投げつけたい衝動にかられた。でも、真っ白なクロスを見て思いとどまった。
ーーー危なかった。せっかくのお城に白桃の苦み走った思い出が、刻まれてしまう所だった。
インターフォンが鳴り、私はすっかり重くなった腰を上げた。
画面を確認して、「開いてますから、どうぞ」と素っ気なく伝える。
「ふざけるな、山田! 両手が塞がっている。ドアをお前が開けろ」
画面の中で、マットレスらしきものを抱えた上野課長が吠えている。
ーーーもう、面倒だなぁ。
仕方なく玄関へ向かう。
ーーーあ〜あ、凹むわ〜。今まで女として生きてきた私の人生全てを否定された気分だわ。
玄関のドアを開ける。途端に四角い大きなものが、妖怪のぬりかべみたいになって入ってきた。
「山田、どけ! 潰すぞ」
ぬりかべの後ろから、上野課長の声がした。
「課長、でか過ぎませんか? これ」
「仕方ないだろ。文句言うな」
寝室にさっさと運び、ぬりかべをベッドの横に置く課長。
「これで良し」
満足そうに笑顔を見せた課長を私は、複雑な気持ちで見ていた。