恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
噂が噂を呼ぶ
「さっきから、課長ばっかり見てるけど……どおかしたの?」
紗季にそう言われて、瞼をこすった。
ぼおっとしていたのは、断じて課長に見惚れていた訳では無い。
ーーー完全に寝不足だ。それもこれも下に住む上野課長のせいだ。絶対に言わなきゃ。
廊下へ出た上野課長を追いかけ声をかけた。
「上野課長!」
笑顔で振り返ったが、呼び止めた相手が私だとわかると露骨に眉間に皺を寄せた。
「……なんだ、山田。用件は、簡潔にしろ」
ーーーかあ〜良く言うよ。いつもは自分が用件言い出す時は、めちゃくちゃに長いくせに。
「わかってますよ」周りを見回して、誰もいないのを確認してから、用心のために課長のそばに寄って声を低めることにした。