恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
ニンマリ笑い、早乙女さんは手を左右に振りながら言った。
「大丈夫、大丈夫。口は貝みたいに固いから」

「早乙女さん、あの勘違いしないでくださいね。私と課長は同じマンションでも課長が…うぐぐっ」

課長に口を抑えられていた。課長は、爽やかな笑顔を早乙女さんに見せながら私の耳元で囁いた。

「いいか、俺はお前の下に住んでるなんて知られたくないんだ。恥だからな」


ーーーはあ? そんなに下に住んでるのが嫌な訳? 早乙女さんは、私と課長が同じマンションで一緒に暮らしてると誤解してるよ。絶対に。それは、誤解とかないわけ?


「うぐぐぐっ?!」


「早乙女、余計なことは言うな」

「はい、もちろん! 上野課長が山田さんと付き合ってるなんて皆が知ったら驚きますもんね」
凄く楽しそうに答える早乙女さん。


ーーーほら、あの顔! 絶対、不用品回収業者みたいに拡声器使ってカメみたいにゆっくり歩きながら言うんだから!

口を抑えられた私は、課長を睨みつけた。
早乙女さんが、コソコソと退散するとやっと手を離した課長が安心したように言った。

「良かったな。早乙女、黙っててくれるみたいだ」


「えぇ?!」

ーーーまじで早乙女さんが言わないとでも信じてるの?

安心した笑顔を見せる課長が、ほとほと嫌になってくる。

ーーーこのお人好し! 女は人の噂が大好きなのを知らないわけ?

大きなため息をついてしまった私は、すっかり課長に聞きたいことを聞くのを忘れてしまっていた。

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